傾城阿古屋 2019年正月公演 男前と粋

平成31年(2019年)初春文楽公演1月3日~25日まで 大阪日本橋 国立文楽劇場にて 第二部(午後4時開演)冥途の飛脚 壇ノ浦兜軍記 の構成。平成24年(2012年)以来の公演です。阿古屋の主遣いはもちろん桐竹勘十郎さん。

当時の人格者として信頼の厚い代官 畠山重忠とその対曲ともいえる代官 岩永の2名による阿古屋への責めの場面が描かれています。その責め道具として粋にも三曲‐琴、胡弓、三味線の演奏の乱れをもって傾城・阿古屋に源頼朝暗殺を企てた恋人、悪七兵衛景清の行方の真偽を探ろうとするお話しです。恋人のために凛とした佇まいで三曲の演奏をしてのける傾城(芸子)阿古屋に惚れ惚れしないはずがありません。

 

【壇ノ浦兜軍記】阿古屋琴責の段の傾城 阿古屋

游君 阿古屋 頭は傾城。ヘアスタイルはたて兵庫という華やかなもの。一体何

本の簪や飾りだろうかと、いつまでも眺めていたいお人形さんなのです。また、

それにもまして衣装の豪華なこと。ダラリの帯は文楽では三曲演奏の時にははず

していますが、歌舞伎の坂東玉三郎さんが演じられる際には確かそのままであっ

たような気がします。豪華絢爛を身にまとった傾城 阿古屋の裁判での2名の代

官による交互の厳しい証人喚問のシーン。

いとしい恋人 景清の行方をあくまでも知らぬ存ぜぬと身重でありながら、涼し

い顔で言ってのけるその強さ、しかし時の大将源頼朝の暗殺を企てた大悪人の恋

人を案じ、もう会うことも無い、と知っている阿古屋の心中を察すると、舞台の

お人形さんはもはや人間以上の切なくも麗しい存在と化すのです。

 

阿古屋琴責の段 素浄瑠璃はこちら! 

 

◎2019年正月公演【壇ノ浦兜軍記】

日本文楽劇場のHPはこちら

 

◎男前と粋

・岩永の恐ろしい脅迫に対して

阿古屋「おほほほほ。。そんな事怖がって苦界(クガイ)が片時なろうかいな。同じように座に並んで殿様顔してござれども意気方は雪と墨。重忠さまの計らいとて榛沢さまの今日の詮議。縄もかけず責めもなく六波羅の松蔭にて物ひそやかに義理づくめ様々といたわりて『さあ、景清が行方は?』と問われし時のその苦しさ、水責め、火責めは堪へうが、情けと義理とにひしがれてはこの骨々も砕くる思い。それほど切ない事ながら、知らぬ事は是非もなし。この上のお情けには、いっそ殺してくださんせ。」

 

・重忠に景清との出会いを尋ねられて

阿古屋「何事も昔となる恥ずかしいものがたり。~途中省略~下向にも参りにも道も変わらぬ五条坂、互いに顔を見知り合い、いつ近づきになるともなく、羽織の袖のほころび、ちょっと時雨の傘(カラカサ)お易い御用。雪の朝(アシタ)の煙草の火、寒いにせめてお茶一服、それが高じて酒(ササ)一つ。。。つづく」

 

・行方を知らぬとの言い訳は聞かぬ、そちは景清と度々逢おうがな、と詮議されて。

阿古屋「私はもとより河竹のあるが中にもつれない親方。目がしらを忍ぶ格子先、編み笠越しに『健(マメ)であったか?』『アイ、お前も無事に。』とたった一口言うが互いの比翼連理。さらばと言う間もないほどにせわしない分かれ路は昔のきぬぎぬ引き替えて、木綿々々と零落れし、身の果て哀れな物語。ああ、おはもじ。」

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